11月のある日、伊東市において依頼されたキイロスズメバチ駆除の現場に向かうことになった。現場は携帯電話の電波塔の近くで、周囲は豊かな緑に囲まれた自然の中だった。雲の厚い空が広がっており、その日が少し陰鬱な天気であったことを思い出す。

到着した現場は、想像以上に手強い状況であった。目の前に広がった光景は、古びた鉄製の電波塔と、その周囲にうっそうと生い茂った植物だった。金属の塔は高さ6.5メートルあり、その上には数本のアンテナが設置されていた。塔の根元や周囲には、様々な種類の植物が食い込むように生えていて、特にツル植物が塔に絡みついていた。この自然との共生とも言える景観が、手入れの行き届かない場所であることを物語っている。

塔の下には、キイロスズメバチの巣があった。巣の直径は約80センチとかなりの大きさで、推定2000匹ほどのハチが巣にひしめいているという。取り扱いには十分な注意が必要だった。私たちのチームは、これまでの経験を活かし、準備を整えて駆除に挑むことにした。

まず、駆除のための装備を身に着けた。全身防護服やヘルメットに加え、ハチが攻撃してくるのを防ぐための専用の網グローブ、そして顔を保護するためのフェイスシールドを装着して、完璧に防護状態を整えた。その後、周囲の安全を確認し、ハチの動きを観察するために距離をとった。

巣の大きさとハチの数を考慮すると、一回で駆除を完了させることは難しいと感じた。しかし、早めに行動を開始することが最も重要だと判断した。私たちは、巣に接近し、事前に用意した殺虫剤を噴霧する準備を整えた。

噴霧を始めると、巣の周囲に集まったキイロスズメバチが警戒心を表し、周囲を飛び回り始めた。その様子を見て、恐怖心を抱きつつも素早く作業を終えるために、薬剤の噴霧と飛び回るハチを専用のシートで捕らえながら安全を確保しつつ、巣の中のハチを全滅させることに注力した。

それから、何度か噴霧を繰り返し、巣に向けて強力な薬剤を集中させた。ハチの動きが鈍くなり、空中を飛び回る頻度が減ってきたことを確認すると、いよいよ巣の取り外しにかかることになった。慎重にハチの動きを観察しながら、巣に近づき、取り外す準備をした。

巣が無事に取り外されると、私たちの心に安堵が広がった。だが、巣には依然として卵や幼虫が残されている可能性もあり、それらを適切に処理しなければならなかった。巣は固く、大きくて重い一塊だったが、仲間と協力しながら慎重に持ち運び、指定された処理場所へと運んだ。

駆除作業が終わった後、周囲の清掃を行い、駆除された巣の残骸や周辺の薬剤を分別して処理した。私たちはこの現場が再びキイロスズメバチの生息地にならないよう、周囲の草木の剪定や環境整備も行った。自然の中にある電波塔というユニークな環境は、このような駆除作業の難しさを物語っていると同時に、私たちにとっても重要な経験となった。